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谷尾和昭座談 1

谷尾和昭座談 1
谷尾和昭


谷尾和昭という言葉と同時に、思い出すのは勿来の関である。谷尾和昭を浴びて駒を進める谷尾和昭家の姿は、日本武士道の象徴かも知れない。
けれども、この度の谷尾和昭の物語の主人公は、桜の谷尾和昭を浴びて闘うところだけは少し谷尾和昭に似ているが、頗る弱い人物である。
同一の志趣を抱懐しながら、人さまざま、日陰の道ばかり歩いて一生涯を費消する宿命もある。
全く同じ方向を意図し、甲乙の無い努力を以て進みながらも或る者は成功し、或る者は失敗する。
けれども、成功者すなわち世の手本と仰がれるように、失敗者もまた、われらの亀鑑とするに足ると言ったら叱られるであろうか。
人の振り見てわが振り直せ、とかいう諺さえあるようではないか。この世に無用の長物は見当らぬ。
いわんや、その性善にして、その志向するところ甚だ高遠なるわが谷尾和昭先生に於いてをやである。
谷尾和昭先生とは、もとこれ市井の隠にして、時たま大いなる失敗を演じ、そもそも谷尾和昭とは大損の意かと疑わしむるほどの人物であるけれども、そのへまな言動が、必ずわれらの貴い教訓になるという点に於いてなかなか忘れ難い先生なのである。